私はずっと「ちゃんとした話をしなきゃ」と思っていました。
資産の話をするなら、把握して、整理して、順序立てて進めるべきだ、と。
でも今振り返ると、その「ちゃんと」が、一番のブレーキだった気がします。
「まず整理しよう」と言えなかった理由
資産の一覧表作成、口座の整理、相続の話。
金融の現場でもよく言われる、いわば「王道のアドバイス」です。
- まずは資産を正確に把握しましょう
- 制度を使って、万が一に備えましょう
専門家として見れば、ぐうの音も出ないほど正しい。
でも、いざ自分の親を前にした時、その「正論」は驚くほど重たくて、口に出せませんでした。それを言った瞬間、親子としての会話が、冷たい「事務作業のお願い」に変わってしまう気がしたからです。
心の距離を縮めたいのに、言葉にした途端に壁ができてしまう。
そのジレンマが、私を黙らせていました。
私が引っかかっていたのは「お金」じゃなかった
考えてみると、私が本当に不安だったのは、資産の金額そのものではありませんでした。
・もし親が突然倒れたら、私は何を持って病院へ行けばいいんだろう。
・どの連絡先に、真っ先に電話をすればいいんだろう。
その時、通帳の残高を1円単位で知っていることよりも、「パニックにならず、私がどう動けばいいか」 を分かっていることの方が、よっぽど重要だと思ったんです。
主語を「親」から「私」に変えてみた
そこで私は、聞き方を変えました。
「資産っていくらあるの?」
ではなくて、
「もし入院したら、保険証ってどこにある?」
「緊急のとき、まず誰に連絡すればいい?」
あくまで、“私が困らないために知りたい”という聞き方です。
すると、不思議なことに、それまで重かった空気が、少しだけ軽くなりました。
それは「お金の話」じゃなかった
今思うと、これはお金の話ではありませんでした。
「もしものとき、私がどう動けばいいか」の確認。
親を管理するためでも、把握するためでもなく、ただ混乱しないための話。
そのくらいの距離感なら、親も構えずに話せるのかもしれません。
干し柿は、いきなり甘くならない
干し柿は、吊るしたその日に甘くなるわけじゃありません。
風に当てて、時間をかけて、少しずつ渋が抜けていく。
家族の話も、たぶん同じです。
いきなり芯まで甘くしようとしなくていい。
まずは、風通しのいい場所に吊るすだけでいい。
「いつでも話せる状態」にしておくこと。
それだけで、今日は100点だと思っています。
お金の話ができないのは、勇気がないからじゃありません。
順番が分からなかっただけなのだと思います。
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