「親の資産がよくわからなくて不安なんです」
金融の仕事をしていると、
こんな相談を受けることがよくあります。
ただ、話をよく聞いていくと、
不安の正体は「金額」そのものではないケースがほとんどです。
- いくら持っているか知らない
- でも、なんとなく大丈夫だと思っている
- それでも、なぜかモヤモヤする
この“言葉にできない不安”には、
ある共通点があります。
怖いのは「金額」ではなく「管理者がいないこと」
親の資産状況がわからない、というと
「貯金がいくらあるかわからない」
という意味に聞こえるかもしれません。
でも、多くの場合は違います。
本当に怖いのは、
- 誰が管理しているのか
- 誰が判断できるのか
- いざという時、誰が動けるのか
・いざという時、誰が動けるのか
これが何も決まっていない状態です。
管理者と判断者がはっきりしていれば、
人はそこまで不安になりません。
逆に、
そこそこ資産がありそうでも、
- 親しか把握していない
- 話題にすると嫌な顔をされる
- 「その時が来たら考える」と言われる
この状態が続くと、
子世代の不安はどんどん膨らんでいきます。
家族会議ができない家庭がほとんど
「家族で話し合えばいいじゃないか」
正論ですが、現実はかなり難しいです。
- お金の話はタブーになりがち
- 元気なうちは“縁起でもない”で終わる
- 兄弟姉妹がいると話が進まない
- 親のプライドを刺激してしまう
結果として、
- 誰も全体像を知らない
- でも、なんとなく先送り
- 問題が起きたら、その場で考える
という状態のまま、
時間だけが過ぎていきます。
私自身、金融マンとして
制度もリスクも理解しているつもりでした。
それでも、
家族の立場になると
この「話せなさ」の壁は、想像以上に高いと感じています。
実際、大手信託銀行や介護関連機関が実施した意識調査でも、驚くべき結果が出ています。
子世代の7割以上が「親の老後に責任を感じている」と答えながらも、
その一方で、親の具体的な資産状況を把握できている人は、半分にも満たない
という実態があるのです。
「責任感はあるけれど、中身はブラックボックス」
このギャップこそが、
子世代の“言葉にできない不安”を膨らませている正体だと言えます。
不安の正体は「揉めそう」ではなく「決められない」
子世代が感じている不安は、
「将来、家族が揉めるかもしれない」
という感情ではありません。
もっと正確に言うと、
「揉める以前に、誰も何も決められないのではないか」
という不安です。
- 判断が必要な場面が突然くる
- でも、権限が整理されていない
- その結果、何も動かせない
これは感情の問題ではなく、
完全に構造の問題です。
誰が悪いわけでもありません。
ただ、
「決める人」と「任される人」が
決まっていないだけなのです。
不安を言語化できるだけで、一歩前に進める
この段階で、
具体的な「対策」を急いで決める必要はありません。
大事なのは、
- 自分が感じている不安の正体
- それが「金額」ではなく「構造」だということ
これを言語化できることです。
それだけで、
「何を整理すべきか」
「何から考えればいいか」
法律や契約といった難しい「制度」の話以前に、
「家族の間で、誰がどこまで把握しておくか」という交通整理が必要だと気づくこと。
それだけで、
「何を話し合うべきか」 「何から手をつければいいか」 が、少しずつ見えてきます。
次は氾濫する「選択肢」をフラットに整理する
とはいえ、いざ「構造を整えよう」と思っても、
何から手をつければいいのか迷うはずです。
世の中には、家族信託や成年後見といった「財産を守るための法的制度」の話から、
見守りサービスや終身サポート事業のような「老後の日常と万一を支える民間サービス」まで、さまざまな備えがあふれています。
これらを一つずつ自分で調べて比較しようとすると、
パズルのように複雑に見えてしまうかもしれません。
次回の記事では、これらのわかりにくい仕組みを、
特定の商品を勧めるためではなく、プロの視点でフラットに交通整理します。
「結局、何が違うのか」
「どれを選ぶべきか、ではなく、どう考えればいいのか」
金融の現場で感じてきたリアルな視点で、
皆さんが「自分の家ならこれかな」と判断するためのヒントをまとめる予定です。
これは不安を煽るための記事ではありません。
家族の未来を守るために、「考え始める場所」をつくるための記事です。
もしここまで読んで、少しでも自分のことだと感じたなら、
それだけで十分だと思っています。
【シリーズ:家族の備えを考える】
次回:


コメント