「親にお金の話をしたら、嫌われるんじゃないか」
そう不安に感じて、切り出せずにいる人は少なくありません。
仕事では、将来の備えやリスク対策についてプロとして話してきた私でも、自分の実家では、この話題になると不思議と距離を感じていました。
結論から言えば、多くの場合、嫌われるのではなく“戸惑われている”だけです。
親世代にとってお金の話は、
- 老いを意識させられる話
- 弱さに触れられる話
- 子どもに心配をかけていると感じる話
だからこそ、反射的に避けてしまうのです。
なぜ家族ほど「お金の話」を避けてしまうのか
お金の話には、独特の空気があります。
- 下品だと思われそう
- 揉める原因になりそう
- 欲張っていると思われそう
特に家族相手だと、「変な誤解を生みたくない」という気持ちが先に立ちます。
「お金の話はタブーだ」
そんな空気が家族の中にできあがっている。
実はこの背景には、親世代特有の心理があります。
▶ 親がお金の話を避ける本当の理由はこちら
心理構造が見えると、「嫌われるかもしれない」という恐怖は少し弱まります。
「話さない方が平和」という考えが生むリスク
金融の現場で仕事をしてきて、「話せなかった家族」が直面する厳しい現実を何度も見てきました。
- 親の判断力が落ちてから、初めて資産の話をしようとして難航する
- 実家の片付けの段階で、兄弟の認識がズレて揉めてしまう
- 「そんなつもりじゃなかった」という言葉だけが残る
どれも共通しているのは、「話さなかったこと自体に、悪意はなかった」という点です。
ただ、
「今は大丈夫」
「まだ先でいい」
「親にお金の話をすると嫌われるんじゃないか」
そう思っているうちに、取り返しのつかないほど時間が過ぎてしまっただけなのです。
とくに注意したいのが、判断能力が低下したあとの口座トラブルです。
▶ 親が認知症と診断されたら銀行口座はどうなる?
実際に起きてからでは、家族ではどうにもならないケースもあります。
お金の話は「管理」ではなく「生き方」の話
ある時から、考え方が少し変わりました。
お金の話は、「いくら持っているか」を確認することじゃない。
本当は、
・どんな暮らしを続けたいのか
・何を大切にして生きていきたいのか
・どこまで家族に頼りたいのか、頼りたくないのか
そのような「感覚」を、少しずつ共有するための会話なんだと思うようになりました。
数字の話をしなくてもいい。
結論を出さなくてもいい。
ただ、「いつでも話せる状態」を作っておくこと
それ自体に、大きな意味があるのです。
「話さない優しさ」が、あとに大きなズレを生む
お金の話をしないことで、一時的に空気は保たれます。
でも、何も共有されていないまま時間が過ぎると、あとから埋めにくいズレが生まれることがあります。
話さなかったから揉めなかった、ではなく、話さなかったから、後で一気に噴き出す。
そんな場面を、何度も聞いてきました。
嫌われずに切り出す、最初の一言
「さあ、今日からお金の話をしよう」と意気込む必要はありません。
「お金の話はしづらいものだ」
そんな家族の呪いを、まずは自分から解いてみる。
それくらいの感覚でいいと思っています。
私が意識するようになったのは、主語を「自分」にすることです。
たとえば、
「最近、自分の老後のことを考えるようになってさ」
「仕事で色々な話を聞くから、ちょっと気になってて」
相手を問い詰めるのではなく、自分の感覚として話してみる。
それだけで、会話の空気は驚くほど変わります。
渋抜きには、時間がかかる
このブログでは、
- 親世代と子世代、どちらも困らないために
- 金融の現場と、家族の当事者、両方の視点から
- お金の話を、少しずつ“干し柿のように”乾かしていく
そんな記録を残していきます。
干し柿も、吊るしたその日から甘くなるわけではありません。
渋抜きには時間がかかります。
お金の話も同じで、心理的な抵抗を抜くには、少し時間が必要です。
だからこそ、今から吊るしておく(話し始めておく)ことに意味がある。
お金の話を避けてきたのは、無関心だったからではありません。
大切だからこそ、難しかった。
そう感じている人にとって、この文章が、最初の一本の縄になれば嬉しいです。
「話す」から「守る」へ
会話ができるようになったら、次に考えるのは“仕組み”です。
家族信託・任意後見・法定後見。それぞれ役割が違います。
違いと全体像を整理した記事はこちらです。
▶ 家族信託・任意後見・法定後見の全体マップ
会話と制度。
両方がそろって初めて、本当の安心になります。


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